エメラルドと間違えられた「ダイオプテーズ(翠銅鉱)」とは
ダイオプテーズという宝石をご存知でしょうか?鮮明なエメラルドグリーンをしており、発見された当時はエメラルドと間違えられていたほど美しい発色をする鉱物です。
こちらでは、コレクターに人気の宝石「ダイオプテーズ」の性質から、歴史や産地をお伝えしていきます。
ダイオプテーズとは
ダイオプテーズは緑色の宝石です。結晶は半透明に近く、少し青味はありますが鮮やかなエメラルドグリーンをしています。濃い緑色をしているため、せっかく持つ強力なファイアーが表面に現れることはあまりありません。
モース硬度は5と比較的柔らく、へき開性があって欠けやすいためにジュエリーとしてカットされることはほとんどありません。
ダイオプテーズの性質
| 結晶系 | 三方晶系 |
| 化学組成 | 含水銅珪酸塩 |
| 硬度 | 5 |
| 比重 | 3.31 |
| 屈折率 | 1.67-1.72 |
| 複屈折量 | 0.053 |
| 光沢 | ガラス状 |
エメラルドに間違えられた宝石

ダイオプテーズが最初に発見されたのは、ヨルダンにあるアイン・ガザールという新石器時代の古代遺跡で見つかった彫像に使用されていたものでした。
メソポタミアの先土器新石器時代B期に制作された、しっくいを材料とする彫像で、ダイオプテーズは眼のハイライトとして使用されていました。
この彫像は、紀元前7200年に作られたものと考えられています。
その後、18世紀後期にカザフスタンのカラカンダ州のアルテュン・テュベ銅山でダイオプテーズは発見されました。
発見された洞窟では、ライムストーンとクオーツが幻想的な輝きを放っており、さらにエメラルドグリーンを呈する鮮やかな結晶で埋め尽くされていたそうです。
発見された緑色の結晶は、当時はエメラルドと間違えられていたそうですが、その後モスクワに運ばれ鑑定が行われました。
その結果、この結晶の硬度は5で、硬度8のエメラルドよりも硬度が遥かに低いことが判明します。
ダイオプテーズの名前の由来
エメラルドと間違えられていた緑色の結晶は、科学的に新しい鉱物だということが判明しました。
そして1797年には、フランスの鉱物学者ルネ・ジュスト・アユイによって「ダイオプテーズ」と命名されました。
ダイオプテーズは2方向のへき開面を結晶表面から見ることができます。
このことから、ギリシャ語で「通して」という意味の”dia”と「見える」という意味の”optos”を足して「Dioptase」と名付けられたそうです。
ダイオプテーズの産地

ダイオプテーズは、ロシア、ナミビア、ザンビア、アメリカのアリゾナ州、チリなどの鉱山で高品質のものが産出されています。
一般的な鉱物とは異なり、ほとんどのダイオプテーズは砂漠のある地域で発見されています。硫化銅鉱鉱床の酸化帯において、二次鉱物として生成される…という少しややこしいプロセスで形成されるのです。
硬度が低いためにジュエリーとして加工されることは稀ですが、コレクターには大変人気の宝石で、カボションやブリリアントにカットされることもあります。
扱いには注意が必要で、超音波洗浄などにかけると結晶そのものが粉砕してしまいます。
まとめ

いかがでしたでしょうか。
ダイオプテーズは硬度の低い鉱物なので、ジュエリーとして見かけることがなく、あまり一般的には知られていない存在なのかも知れません。
しかしながらカットされていない自然なままの結晶も愛嬌があるので、鉱物の標本やコレクションとしてもっと知られてほしい宝石です。
カラッツ編集部 監修





